親鸞聖人の吉水

親鸞聖人は29歳の時、二度目の誕生とも言われる宗教体験、回心(えしん)をされました。体験といっても、生涯念仏申していこうとする決断のことです。ですから、回心とはスタートに立ったということです。ですから回心していよいよ親鸞聖人の念仏修行が始まったのです。

浄土真宗の修行は念仏申すことです。それ以外の、滝にうたれたり、写経をしたりなどの行はしません。しかし、ただ念仏申すだけでは九官鳥とかわりがありません。いかに念仏にこめられている如来さまの願いを聞きとるかが大事です。聞いて知って肯いていく中で、念仏それ自体が、念仏申す修行者を育ててくれるのです。そのため真宗の念仏は「聞名」とも言われ、具体的には聞法することになります。親鸞聖人も先だって念仏申されている法然上人の弟子となり、その念仏道場である吉水で念仏の法を聞き、その研鑽を積まれたのでした。

法然上人が見守る中で熱く議論しあった吉水時代

吉水は法然上人を先生とする大勢の弟子たちの集いでした。いわばそこは念仏の学校だったのです。彼らは法然上人から教えを聞き、共に学習をし、時には激しく議論を交わしました。親鸞聖人も時に同門の兄弟と激しく議論しあったことが伝わっています。あまり白熱しすぎ、法然上人がやってきてこともありました。

親鸞聖人はそのような吉水で35歳までの6年間を過ごしました。その間には法然上人から、『選択集』や法然上人の絵像を頂きました。聖人は後年それを思い起こし、これぞ往生が決定したしるしだと、大変感激されています。

吉水時代は、親鸞聖人にとって生涯で最も充実し、楽しかった時間だったと思われます。