親鸞聖人の生涯

親鸞聖人の生涯

親鸞聖人は、浄土真宗の宗祖として早い時期からその生涯を門徒たちが学んでいました。とりわけ報恩講では御絵伝(ごえでん)を掛け『御伝鈔(ごでんしょう)』を読み上げて、毎年聖人の生涯が憶念されてきました。また江戸時代になると多くの伝記物が出版され、虚実入り交じった物語が人々に読まれ、また講演されました。現代でも毎年のように聖人の生涯を主題とした本が出版されています。
伝記の代表的なものはまず古典である『親鸞聖人伝絵(しんらんしょうにんでんね)』です。聖人の曽孫(ひまご)になる覚如(かくにょ)上人が作られたもので、現在はその本文が『御伝鈔』と言われ、挿絵をまとめたものが御絵伝と呼ばれる掛け軸になって広く普及しています。
近代のものとしては佐々木月樵(ささきげっしょう)の『親鸞聖人伝』があります。上宮寺の48代月樵は、若い時分から多くの伝記本を読み調べ、実際に現地にも足を運んで取材をしました。この成果を明治四三年に出版して広く人々に影響をあたえました。
現代のものは学者や学生向けの研究書から、一般の門徒に対して書かれた概説書まで数多くあります。最近では、東本願寺から出版された

『親鸞 生涯と教え』東本願寺、2010
『親鸞 生涯と教え』東本願寺、2010

『親鸞 生涯と教え』があります。これはもともと高校生向けに作られたもので、写真や図をふんだんに用いた読みやすい作りになっています。

聖人は西暦1173年から1262年という平安末期から鎌倉初期に一生を過ごされました。90年という非常に長命な人生でした。仮にその生涯を章立てすれば、①誕生・②出家・③比叡山・④下山・⑤回心(えしん)・⑥吉水(よしみず)・⑦法難(ほうなん)・⑧関東・⑨帰洛(きらく)・⑩執筆・⑪臨終(りんじゅう)・⑫滅後(めつご)の12ほどに区切れると考えられます。これらの項目にしたがい、聖人の御生涯をご紹介していきます。