諸行無常(しょぎょうむじょう)

「あらゆる物事は移り変わっていく」、これが諸行無常の教えです。

これは道理を説いたものです。ですから仏教を信じる信じないに関係なく、全ての人にあてはまる法則を教示しています。

「行」は「つくられたもの」を意味しますので、物質だけでなく、精神的な私たちの心や感情もはいります。そのため「形あるものは壊れる」といった単純な物理法則ではなく、私たちの人生そのものの在り方が、そこにはとらえられています。

私たちは、生まれて活きるなかで、成功や勝利に喜んだり、失敗や敗北で苦渋を味わうこともあります。時には病気もし事故にも遭い、変化しつづける人生を悲喜こもごもに過ごしていきます。そしてやがては老い、死を迎える。このように人生は諸行無常に貫かれています。

日本人は「諸行無常」と聞くと、『平家物語』の「おごれる人も久しからず」や、『方丈記』の「行く川のながれは絶えずして」などと、ものさびしさや空しさを連想しがちです。しかし「諸行無常」の道理は、悪いことも起こるが、善いことも起こることを述べています。

「人は衰え死んでいく」ことも諸行無常ですが、「人は成長し変われる」と教えてくれるのも諸行無常の道理です。ですから「明けない夜はない」という希望の教えにもなっているのです。