仏舎利
今から約2500年ほど前、インドのシャカ族出身のゴータマ・シッダールタが、真実の法に目覚めブッダ(仏)と成られました。後にお釈迦さまと呼ばれたゴータマ・ブッダは、50年近い説法生活の終わりに、クシナガラの地にて80歳で生涯を閉じられました。
お釈迦さまが亡くなられた後、そのご遺骨である「仏舎利」は、縁のある在家の人びとによって分骨され、インド各地に塔が建てられ安置されました。
やがて時代がくだり、仏教はインドの地から広く世界に弘まっていきました。日本仏教は北からの伝播ですが、インドから南へ弘まっていた流れもあります。その最初がセイロン島―現在のスリランカへの伝播で、その時には経典と共に仏舎利も伝わったといわれています。
2011年に、仏教に基づいたサルボダヤ運動という農村開発運動を半世紀以上行っていたスリランカのアリアトネ氏は、日本より仏教伝道文化賞を贈られました。アリアトネ氏はその副賞の賞金でもってスリランカに仏塔を建てられ、その時に自分に縁の深い日本人7人を招待し、自らの仏塔に納める仏舎利を、その7人にも分骨して贈りました。
仏舎利を贈られた7人のうちには、上宮寺の門徒であった杉浦正健(せいけん)氏がおられました。杉浦氏は、贈られたものとはいえ、お釈迦さまのお骨を個人が所有するわけにはいかないと、上宮寺へ寄贈されました。
寄贈にあたって杉浦氏は新たに聖徳太子の御厨子を奉納され、「日本のお釈迦さま」と呼ばれたお太子さまと共に仏舎利が公開され、永年にわたって人びとに仰がれることを願われました。
金色の舎利塔に納められた仏舎利は、上宮寺での勤めごとに太子像と共に公開され、インド―スリランカ―日本と伝播してきた仏教の威徳を、これからも伝えてくれることでしょう。