不断桜

不断桜

上宮寺には寒くなると咲く桜が植わっています。例年冬が近づいてくると咲きだし、3月頃までの長い期間花がついています。

春の桜と違い、遠慮深く咲いていますので、気がつく人だけが見られる桜です。寺伝では不断桜(ふだんざくら)と言われ、一向一揆後の復興時に植えられたと言われます。

当時の住職であった36代尊祐(そんゆう)は、天正十三年(一五八五)にようやく徳川家康より伏見城下の陣屋にて寺領安堵の黒印状をもらい受けました。その折りに家康は尊祐に対し、伊勢国白子ノ郷(現三重県鈴鹿市)の徳川家累代の祈願所、真言宗子安観音寺に立ち寄り、今回の吉報を本尊白衣観音に報告すべき旨を托したのです。

尊祐は早速同寺を訪れ家康からの赦免を住職に伝えたところ、今回のはからいは天下泰平のあかしと喜び、尊祐に庭前の名木「不断桜」の若木を分け、その労をねぎらったと伝えられています。

それ以来400年、昭和の火災にも耐え、年ごとに大きくなり、現在では株分けされて3本が境内で咲いています。

大みそかの除夜の鐘では、鐘楼横の樹がライトアップされ、鐘撞きに来る人が思いがけない桜の花を喜んでいます。