蓮如筆十字名号

「蓮如筆 十字名号」―真宗の御本尊―

蓮如筆十字名号
蓮如筆十字名号(寛正2年(1461))

【中央「十字名号」】

あなたは、碍(さわ)り無く十方を尽くす光の仏陀―阿弥陀如来に帰命しなさい。

【上段左銘文『無量寿経』「第十八願文」】

〔阿弥陀仏はこのように願われました。〕たとえ私が仏の位を得ても、あらゆる生きとし生けるものが真実の信心をもって私の国である浄土に生まれたいと願って、少なくとも十回の念仏を称して浄土に生まれなければ、〔私の覚りは〕正しい覚りとはいえません。

ただ五つの逆罪をする者と、仏法を疑い謗る者だけは私の国から除きます。

【上段中央銘文『無量寿経』「東方偈」】

〔釈尊はこのように説かれました。〕阿弥陀仏の本願のお力は、阿弥陀仏の御名を聞いて往生したいと欲すれば、誰ももれることなくその国浄土に到り、自然に仏に成る道からそれさせません。
〔またこのように説かれました。〕必ずこの流転する娑婆を超えて、浄土に往生しなさい。本願の力に依れば、よこさまに五つの悪道を断ち切って地獄・餓鬼・畜生などの道は自然に閉じます。涅槃への道を昇ること極まりありません。このように〔阿弥陀仏の浄土へは〕往き易いが、往生する人はいません。浄土は真実にたがうことがないのであるから、本願力に依って自然に導かれる処であります。

【下段左銘文『浄土論』】

〔天親菩薩(てんじんぼさつ)はこのように言われました。〕仏陀世尊よ、私は一心に尽十方無碍光如来(じんじっぽうむげこうにょらい)に帰命し、安楽国に生まれたいと願います。

私は経と真実功徳〔である本願の名号に〕依って、願いをあらわすこの偈(うた)を説いて、心身に忘れずたもって仏教と相応じます。

浄土のすがたを観察すると三界の道を勝れ超えています。〔また〕虚空(こくう)のように広大でいて、その際限がありません。

【下段中央銘文『浄土論』「不虚作住持功徳(ふこさじゅうじくどく)」】

〔またこのように言われました。〕阿弥陀仏の本願力を観察してみると、それと出遇(であ)って空しく人生を過ごす者がいません。それは速やかに宝の海のような阿弥陀仏の功徳に満たされるからです。

【下段右銘文 親鸞聖人の勧め】

これが、愚禿なる凡夫(ぼんぶ)親鸞が敬い信じる阿弥陀仏の尊号です。

【解説】

浄土真宗の教えで中心にあるものが「御本尊(ごほんぞん)」です。「ご本尊」とは「根本に尊い存在」のことで、親鸞聖人や蓮如上人はそれを阿弥陀如来だと発見されました。

ではその阿弥陀如来とは何か、我々とどう関係するのか、なぜ本当に尊いと言えるのか。それを私たちが理解し納得できるように、懇切に伝えようとしたのがこのような「十字名号」です。

蓮如上人は寛正2(1461)年に、自分が教えられたこの名号を上宮寺の如光に贈り、三河の人々に阿弥陀如来を伝達する第一歩としました。三河真宗における記念碑的な法宝物です。