「本来 葬式はめでたいもんだよ」

本日の朝日新聞、「折々のことば」に、【○○さんが、ワリー言いよったが昨日ミテタと。】という「ことば」が紹介されていた。

高知あたりの言い回しのようで、「ミテルは、人が死ぬこと、物がなくなること。「満たす」の古い形で、いっぱいにするという意味だそうだ。死をこのように、終了ではなく満期と考えると、死への心がまえも変わる」と解説されていた。

それで思い出すのが、黒澤明監督との「夢」という映画である。「夢」は、いくつかの話をつなげたオムニバス形式の映画だが、その締めくくりとして「水車のある村」というお話が最後にある。

その中で、あでやかな着物の人々が、楽器を演奏し、花をまき、花笠をかぶっておどる行進が描かれている。旅の者が「お祭りですか」と尋ねると、「あれは葬式だ」と村の老人から返ってくる。老人を演じる笠智衆は、それに続いて、

「本来葬式はめでたいもんだよ。よく生きて、よく働いて、ご苦労さんと言われて死ぬのはめでたい」

と語っている。黒澤明の独特な死生観を感じさせるこの場面が、とても印象深く残っている。

ある通夜の説教の席でこれを紹介したところ、台湾で仕事をされていた方から、「台湾では葬式の時に、「おめでとうございます」と挨拶するのですよ」、とおしえてもらった。

「死は悲しく辛く禁忌とすべきこと」という日本の習俗の中で、だからこそ仏教である浄土真宗は、「満たされ、めでたい、明るい死」を提示していきたいと考えています。