お釈迦さまの誕生

お釈迦さまは現代よりおそよ2500年ほどむかしに誕生されました。異説はありますが紀元前566年のことだといわれます。

釈迦降誕(ニューデリー国立博物館)

北インドのシャーキャ族(釈迦族)の貴族階級の家に生まれ、父はスットーダナ(浄飯王(じょうぼんおう))、母はマーヤー(摩耶夫人(まやぶにん))といいました。
母のマーヤーはお産のために里帰りする途中、ルンビニという園で休憩をとった時に急に産気づき、そこでお釈迦さまを出産されたそうです。お経が伝える物語では、誕生時には世界全体が揺れ、天から神々が祝いに音楽を奏でたり花を舞い散らし、香湯を産湯として祝ったとされています。

お釈迦さまはすぐに歩かれ、「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)」と宣言されたといわれます。この言葉は『無量寿経』には「吾(われ)、まさに世において無上尊(むじょうそん)となるべし」と語られています。

世間とはいつでも善悪、上下、優劣が評価され求められる場所です。ですから私たちも自然とそれを習い上方指向で生きることになります。現代は特にそれが顕著となり、「勝ち組・負け組」とか「富裕層・貧困層」など社会の分断が極端に喧伝されるようになっています。そのような世間はいわば「最上尊(さいじょうそん)」を目指す生き方であるといえます。

誕生仏

それに対して、お釈迦さまが生まれた時の言葉は「独尊」であり「無上尊」です。これは「最上尊」のように、比較し比較されて上下・優劣を決める生き方ではなく、比較を超えた生き方を誓った言葉です。いわば「ただそれだけで尊い・ありのままで尊い」という生き方を目指したものです。本来それが誕生の意味であるといえます。

お釈迦さまがお生まれになったのは4月8日のことだといわれています。現代でもこの春の季節に「花まつり」と呼ばれる仏事が勤まります。子どもの誕生祝いでもあるこのお勤めは、「生まれたことそれだけで尊い」と、人間の誕生をお釈迦さまになぞらえたものです。