安保法で壮大な実験は頓挫するのか
有史以来、人間は問題解決の手段として暴力や戦争を有効なものだと信じてきた。それは現代もほとんど変わっていない。変わったすれば、抜き身の暴力から後ろ手にちらつかせる暴力に変わったといったことだけであろう。
そのような人間の歴史の中で、暴力に頼らない国造りをしようとしたのが、日本の戦後70年間だった。自衛隊の配備やアメリカの安全保障のもとでといったように、一切の暴力を排除するまでにはいかなかったが、それでも憲法9条をかかげて、問題解決から戦争を排除した国造りをしてきた。
それは単に一国の話ではなく、有史以来克服されずにきた、人間社会の根本的問題に取り組んだ壮大な実験でもあった。だから世界から日本は一目置かれていた。
そのような先人の偉大な志や世界からの期待をひっくり返したのが、今回の安保法の成立だと思う。日本は再び暴力を当然とする世界にもどってしまうのだろうか。人間は進化することはできないのだろうか。