お釈迦さまの涅槃

29歳で苦悩からの解放を求め家庭や国を捨て、35歳にその道を見つけ、それを仏法として人びとに語り続け、街から街へ村から村へとお釈迦さまは歩み続けました。その説法の旅は45年におよびました。

80歳の高齢になったお釈迦さまは寿命が尽きることを知り最後の旅に出発しました。それは故郷のシャカ族の街、カピラヴァストゥへの旅でした。「自分はもう壊れかけた車のようだ。ちぎれそうな革紐でかろうじて動いているのだ」と語ったお釈迦さまのそばには、アーナンダ(阿難)という若い弟子がしたがっていました。

旅の途中でお釈迦さまは病気となり、いよいよ最期が近づいているとアーナンダに告げました。アーナンダは驚き嘆き、どうか私たちのもとを去らないでほしいと懇願しましたが、「変わらないものはない、生まれて死なない者などないと常々教えてきたであろう」とアーナンダを諭しお葬式などについて指示しました。

お釈迦さま最後の旅は、故郷まで半年あまり歩みクシナガラという地で終わりました。そこでお釈迦さまはついに歩くことができず、サーラ(沙羅)の樹の下で横になって最期の時を迎えられました。「世も人も無常である、だからこそ怠ることなく道を歩みなさい」それがお釈迦さまの最後の教えであり遺言でした。2月25日のことだったと伝えられています。

お釈迦さまの死は涅槃(ねはん)に入られたと言います。「涅槃」とは火が消えたという意味のインドの言葉で、苦しみの煩悩の炎が完全に消えたという意味です。言葉をかえれば苦しみ悩み多き人生の業を尽き果たした、やるべきことをやりはたしたということです。そこには不完全燃焼となる我慢や不満、言い訳やごまかしを打ち破り完全燃焼の人生でありいのちであったことが語り示されています。