故白土三平のマンガ

マンガ家の白土三平氏が10月8日に亡くなられたそうである。その4日後には後年の白土マンガにはかかせなかった実弟の岡本鉄二氏も逝かれたそうである。

はじめて読んだマンガが手塚治虫と白土三平でした。まだひとりで本屋も行けない小さい頃、父の本棚に唯一あったマンガが白土三平の『ワタリ』でした。まさかりを背負った主人公たちが繰り広げる忍術合戦に、手塚治虫とは違う魅力を感じて何度も手に取っていました。

当時は主人公の名でもある「ワタリ」という言葉の表す意味がよくわからず、最終回が腑に落ちなく、きっとハッピーエンドの続きがあると信じていました。

後年『カムイ伝』をはじめとした白土作品を自分で集められるようになってから、「ワタリ」や「抜け忍」などの白土作品の設定に、組織や社会、または暴力や差別からの解放・自由という重厚さがあるのを徐々にわかるようになりました。白土作品が一貫してテーマとしている願いがわかれば、主人公の多くが、寒風の中、背中を向けて去っていくような終わり方に、いまだ願い果たされずという作者の思いを汲み取ることもできます。

『カムイ伝』の第三部も結局書かれずに終わってしまいました。続きが読みたかった悔やみと同時に、主人公カムイには、現代社会と伴に終わらない願いへの旅がふさわしいとも思えます。